父が作ってくれた印鑑

実家は本屋をしていました。ある日、父が「合資会社にするから役員になれ」というのです。何のことかわからずにいると「印鑑を作ってやるから、実印登録をしてきてほしい」とのことでした。役員報酬は・・今おもいだしてみると、何もなかったです。

もう30年近く前に、父は本屋をやめました。父も母も、もう亡くなりましたが、形見のように父が作ってくれた印鑑が残っています。大事に大事にしています。両親の住んでいた家を処分するときに、この印鑑を使いました。「役員になれ」といった時の父を思い出しました。お父さん~今、実印が役に立ってますよ。
ふつうの主婦には、実印を使うチャンスはなかなかありません。今は大事なものがしまってあるところに、保管しています。シミジミみると、独特な書体ですね。素材は何だったのでしょうか?朱色をしています。まだ若かったので、実印って何か?もわからず、すっかりお任せで作ってもらった印鑑ですが、気に入ってます。
さてこの先、この印鑑を使うチャンスはあるのでしょうか?今さらお金を借りるわけでもなし、不動産の取引をするわけでもなし・・保管には、気を付けていないといけませんね。大事なものだ、ということはわかります。やたらと使うものではない、ということもわかります。でも、愛着のある印鑑なので・・ちょっとした書類に押してみたい誘惑にかられます。でも、やめておきます。
この印鑑を使う時は、両親の家を処分したときのように、人生の区切りになる大事な時だと思うのです。

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